以前記事にした「“Snapdragon 835″の”Windows 10” PCがついに登場」で紹介したWindows on ARMのストレージUFSを知らなかったので、従来のストレージと比較してみました。
なお、SSDやeMMC同様にUFSもフラッシュメモリの一種です。
目次
フラッシュメモリ
フラッシュメモリは以下の2種類に大別されます。
※詳しくは、以前書いた記事「フラッシュストレージの種類・選び方まとめ」をご覧ください
種類 | NAND型 | NOR型 |
---|---|---|
特徴 | 高集積化が可能(小型で大容量) 読込/書込が共に高速 |
信頼性が高い 書込が低速 |
主な用途 | 補助記憶装置 (USBメモリやSSD, eMMC) |
BIOSのROM (ファームウェア) |
USBメモリやSSDでは、読込/書込共に高速なNAND型が採用されています。
逆に、NOR型フラッシュメモリは高い信頼性を生かし、BIOSのROM(ファームウェア)などに利用されています。
今回は、補助記憶装置として一般的なNAND型フラッシュメモリに焦点を当てていきます。
NAND型
NAND型フラッシュメモリは、以下の製品が主流となっています。
- 内蔵タイプ
- PC内蔵型ストレージ
- SSD(solid state drive)
- PC組込型ストレージ
- eMMC(embedded MultiMediaCard)
- UFS(Universal Flash Storage)
- PC内蔵型ストレージ
- 挿抜可能タイプ
- USBコネクタパッケージ
- USBメモリ
- カード型パッケージ
- SD(Secure Digital memory card)
- MMC(MultiMedia Card)
- CF(CompactFlash)
- USBコネクタパッケージ
NAND型共通の欠点
早速ですが、NAND型フラッシュメモリの欠点です。
後述しますが、コントローラ開発に手間がかかります。
ずばりコストです。
SSD
SSDはHDDの置き換えを目的としており、当初は2.5インチのIDE/SATA端子搭載デバイスがリリースされました。
HDDの転送速度を上回り、且つランダムアクセスが高速なデバイスです。
従来のI/Fの上限を上回るため、SATA以外の製品も存在します。
現在は、以下の4種類がリリースされています。
- I/F
- SATA
- PCI Express(の拡張カード型)
- NVMe(NVM Express / Non-Volatile Memory Express)
- U.2(SFF-8639)
- 2.5インチのカード型(通常の2.5インチのSSD/HDDの5Vと異なり12V、あるいは3.3V駆動)
- M.2
- Type2242 サイズ:幅22×長さ42mm
- Type2260 サイズ:幅22×長さ60mm
- Type2280 サイズ:幅22×長さ80mm
※U.2のUはユニバーサル(汎用性)、M.2のMはミニ(小型)を表しています
base on http://e-words.jp/w/SSD.html
ハードディスクなどの磁気ディスク装置は磁気的に、DVDなどの光学ディスク装置は光学的に信号の読み書きを行うが、SSDは半導体素子に電気的にデータの記録、読み出しを行うため、極めて高速に読み書きが可能となっている。
また、高速で回転する円盤(ディスク)やモーター、盤上を移動する読み書き装置(ヘッド)といった機械部品がないため、消費電力が少なく、耐衝撃性に優れ、振動や駆動音もなく、装置の形状を小型、薄型、軽量にすることができる。
ただし、フラッシュメモリは書き込みを行うごとに素子が劣化するため、同じ容量なら磁気ディスクより書き換え寿命が短い。
この欠点を補うため、多くのSSD製品では、なるべくまんべんなく各素子に書き込み動作が分散するようコントローラICが記録位置の選択を行う「ウェアレベリング」と呼ばれる制御を行っている。
また、現在のところ容量あたりの単価は磁気ディスクや光学ディスクよりフラッシュメモリのほうがはるかに高額なため、SSDは記憶容量が少ない製品が多い。
コンピュータにSSDとハードディスクを両方搭載し、システムファイルや頻繁にアクセスされるプログラムやデータをSSDに保存して、それ以外はハードディスクに保存するといった使い分けが行われることが多い。
筐体仕様(フォームファクタ)やコンピュータ本体との接続インターフェースは、当初は既存の機器と置き換えられるようハードディスクと同じ規格が流用されたが、SSDの高速な読み書き性能や省スペース性を最大限活用すべく、mSATAやM.2、NVMe、SATA ExpressなどSSDにより適した規格も制定され、普及しつつある。
eMMC
eMMCはEmbedded Multi Media Cardの略で、その名の通りSDカードの前身MMC(Multi Media Card)の拡張規格です。
Embeddedという名が表すとおり、組込用途向けのフラッシュメモリです。
SDカード同様、NANDフラッシュメモリと制御回路から構成されています。]
MMCの拡張規格ですが、実際にはカード形態で供給されているわけではなく、基盤に直に実装されます。
あくまで、インターフェースにMMC互換性を持たせたフラッシュメモリという位置付けです。
インターフェイスの仕様上、データ転送はSSDよりも遅いですが(それでもSSD同様)ランダムアクセスに強い傾向があり高速な読み書きができるストレージです。
要点・メリット
- MMCと同じI/F、基本的にほぼ同じ命令系(SDカード実装のノウハウが生かせる)
- コントローラ内蔵(制御回路の開発が不要)
- 開発費が抑えられる
- 低消費電力
- 小型
- JEDEC(半導体技術協会)で規格が標準化されている
base on https://news.mynavi.jp/article/20150313-smartphone_word1/
フラッシュメモリを利用した記憶装置といえば、パソコンなどを中心にSSDが普及していますが、eMMCはSSDほど高速ではありません。
しかしハードディスク(HDD)に比べると構造がシンプルで、より高速に読み書きできるため、スマートフォンやタブレットでの採用が進んでいます。
いわゆる内蔵メモリ/ストレージ、Android端末の場合は内蔵ROMとも呼ばれる部分にeMMCが活用されているのです。
SSDに比べ小型化が容易なことと消費電力が低いことも、スマートフォンやタブレットでの採用が進む理由といえます。
大量・大容量のファイルを高速に読み書きする性能が求められるパソコンに比べ、データ転送性能への要求がシビアではないことも理由です。
eMMCの規格はJEDEC(電子素子技術連合評議会)で策定され、バージョンが上がるごとに最大転送速度が向上しています。
eMMC 4.5からは最大200MB/秒のHS200モード、eMMC 5.0からは最大400MB/秒のHS400モードがサポートされるようになりました。
より高速なUFS(Universal Flash Storage)が後継規格として期待され、サムスンなどの企業が量産を開始していますが、スマートフォン/タブレットにおいてはeMMCが主流という状況はもうしばらく続くことでしょう。
デメリット
基盤に直に実装されるeMMCは、集積回路(ICチップ)で供給されるため形態が自由です。
自由な分、ラインナップや容量で形状/サイズが異なります。
そのため、設計上の柔軟性に欠けます(設計時にバリエーションを考慮する必要がある)。
バージョン
バージョン | 初期 | 4.3 | 4.51 | 5.0 |
---|---|---|---|---|
転送速度 | 20 MB/s | 52 MB/s | 200 MB/s | 400 MB/s |
備考 | - | - | HS200モード | HS400モード |
UFS
UFSはeMMCの後継と目されている規格です。
eMMC程度のサイズ/消費電力でありながら、SSD並の高速性能を持つとされています。
base on Universal Flash Storage
UFS is positioned as a replacement for eMMCs and SD cards. Unlike eMMC, Universal Flash Storage is based on the SCSI architectural model and supports SCSI Tagged Command Queuing. UFSは、 eMMCおよびSDカードの代わりに位置付けられています 。
eMMCとは異なり、Universal Flash StorageはSCSIアーキテクチャモデルに基づいており、 SCSI Tagged Command Queuingをサポートしています 。
バージョン
バージョン | 1.0 | 1.1 | 2.0 | 2.1 | 3.0 |
---|---|---|---|---|---|
レーン数 最大 |
1 | 1 | 2 | 2 | 2 |
総帯域幅 (MB/s) |
300 | 300 | 1200 | 1200 | 2900 |
以下の記事は2015年のものですが、既に十分な高速性能が備わっていることが伺われます。
base on サムスン、「UFS 2.0」準拠の超高速フラッシュメモリを正式発表 ―最大128GB シーケンシャル読み込みと書き込みの性能に関しても、従来モデルから「50%」の消費電力を削減しつつも、”SSD並み” のパフォーマンスを実現していることが明らかにされました。
2018.6.30 追記UFS 3.0 の総帯域幅が誤っていたので修正しました。
Introduction of M-PHY HS-Gear4, with a data rate up to 11.6 Gbps per lane, a 2x performance increase over M-PHY HS-Gear3
Continues support of 2-Lanes, max data rate of 23.2 Gbps
M-PHY HS-Gear4の導入により、レーンあたり最大11.6 Gbpsのデータレート、M-PHY HS-Gear3に比べて2倍の性能向上
2レーンのサポートを継続、最大データレートは23.2 Gbps