Chromebookシェア躍進の考察

先日、遅ればせながら Chromebook のサポート期間が 7年以上になったことを知りました。

Chromebookサポート期間が8年に延長されていた – あららぼ

2020年以降に登場する Chromebook が対象ということで、もう対象の製品がちらほら出ています。
※製品によって、7年〜 8年以上と幅がある模様。

鶏が先か、卵が先か分かりませんが、Chromebook は確実に浸透してきているようです。
今日はその OS のシェア(市場占有率)を見ていきたいと思います。

目次

現在の Chromebook シェア

GIGA スクール構想

GIGA スクール構想(文字通り、学生が使う学校指定のパソコン)の OS シェアでは、Chromebook が頭一つ抜けています。

結論

43.8%

base on 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】Chromebook、GIGAスクールでシェア43%の衝撃! - PC Watch
2021年2月18日 16:00
GIGAスクール構想のOS別シェア

iPad と Windows が競り合っています。
各々 28% です。

デスクトップ OS シェア

上記の GIGA スクール構想は学生限定の話なので、全体に裾野を広げて見てみましょう。

なお、デスクトップ OS とは、クライアント用途で使うパソコンの OS を指します(一般家庭にあるパソコンや仕事で使うパソコンです)。

結論

1.99%

base on 2月デスクトップOSシェア、分類不明が増える | TECH+
2021/03/03 08:53

順位 プロダクト 今月のシェア 先月のシェア
1 Windows 75.89% 76.26%
2 OS X 16.74% 16.91%
3 Unknown 3.40% 3.00%
4 Chrome OS 1.99% 1.91%
5 Linux 1.98% 1.91%
6 Other 0.01% 0.01%

全体から見ると Chrome OS のシェアは少ないですね。
とはいえ、これから社会人になる学生が使っていることを考えると、Chrome OS は今後を期待される成長株と言ったところでしょうか。

Chromebook 躍進の背景

では、Chromebook 躍進の背景を見ていきたいと思います。

base on 登場10周年の「Chromebook」、最新版「Chrome OS M89」の機能や今後の展望は - CNET Japan
2021年03月10日 16時10分
Chrome OSの原点は「高速、高セキュリティ、使いやすさ」

今年で 10週年を迎える Chromebook は、今までのパソコンと何が異なるのでしょうか。

私は 5つピックアップしました。

  1. サポート期間
  2. 高速起動
  3. 高速アップデート
  4. 高いセキュリティ
  5. 端末リプレース
  6. 運用管理・端末管理

各々、ご説明していきたいと思います。

サポート期間

先日記事にしましたが、Chromebook はサポート期間が 7年・8年と長いです。

base on Chromebookサポート期間が8年に延長されていた – あららぼ

加えて、機種ごとに明確に期間が決まっています。
これは導入する組織にとっては、購入計画が立てやすいメリットがあります。
(いやね、稟議通すのって意外と大変なんですよ〜)。

高速起動

Chrome OS は Chromium OS から派生した OS ですが、元は Linux です。
最近の Linux は、起動プロセスに SysVinit を採用しており起動が速いです。
その上、機能が Chrome ブラウザに限定されたことで高速起動が可能になっています。

高速アップデート

(Windows も数秒で起動するマシンがあるので)起動が速いだけなら、なにも Chromebook 最強・・・ということにはなりません。
Chrome OS は前述の通りベースが Linux のため、アップデートに(Windows のような)長い時間を要しません。
再起動したら「しばらく待たされる」ということがないため、いつでもすぐに利用開始できます。
※アップデートはバックグラウンドで適用されます。

高いセキュリティ

前述の "サポート期間" の通り Chromebook はサポート期間が長く、定期的なアップデートが提供されます。
セキュリティの側面から見ると、(教育現場に限らず)組織では全員の端末の安全性が担保された状態でないと意味をなさないため、この存在は大きいです。
それに、Chromebook は機能が限定されていることでセキュリティを担保しやすい環境であることも味方しています。

端末リプレース

Chrome OS はクラウドベースの OS で、従来のパソコンのようにローカルストレージが主体のコンピュータではありません。
自身のリソースは最小でよく、ネットワーク経由のリソース(クラウド)を利用する前提のコンピュータとなっています。
アカウントに紐づくデータはクラウド上に保存されるため、(Chromebook が壊れても)別の筐体を用意して自分のアカウントでログインするだけで環境が復元されます。

Windows など従来のパソコンだと環境はマシンに紐付いているため、端末(マシン)が故障すると環境を元に戻すまで四苦八苦することを考えると、大きなアドバンテージです。

※Windows でも、移動プロファイルなどを使えば環境をアカウントに紐付けられますが(授業に差し支えないレベルのインフラ整備を考慮すると)コスト的に難しいと思います。

運用管理・端末管理

G Suite for EducationGoogle Classroom など、生徒の提出物をまとめて確認するのに適した仕組みが用意されています。

総括

  • Chromebook 一択
    今のところ Chromebook が最善の模様。

Windows は何で出来る汎用機である反面、機能を制限して「管理を優先する」ための仕組みの構築に費用が掛かります。
単純に機能制限をかけるだけなら問題ないのでしょうが(それを教職員が自分で管理するとなると)コストの観点から現実味を失います。
加えて「義務教育」という側面から見ると、どの学校でも同じレベルのサービス提供が求められます。

以前から、教育試乗向けに Windows S が提供されていますが(通常の Windows と余りに似ているため)、管理する側の負担(タスク切替の脳内スイッチングコスト)が大きいようです。

昨今、教職員の方の多忙ぶりがニュースになりますが、「標準化されたサービスをいつでも提供する」という点では、何でも出来る優等生 Windows が苦境に立たされているのも頷けます。

iPad は、かつて IT 化促進の火付け役として多くの企業に導入されました。
Android や(今はもう無い)Windows Mobile と異なり(ハードウェアを Apple が一括管理していることから)解像度などのばらつきがなく、画一的なアプリ開発が容易であると考えられたのが一番の理由でしょう。

加えて、iPad は(他の Apple 製品同様に)アプリなども限定的です。
元々、Windows と比べるとアプリの絶対数が少ない上 "App Store" 経由でのインストールに限られるため、セキュリティの担保もしやすくなります。

しかし、iPad はディスプレイ部分にガラス素材を使用し(小学生が使用するには)強度に欠けます。
タブレットとして使用する分には優秀ですが、(キーボード・マウスの使用を前提とすると、これは Android タブレットも同様ですが)アプリの対応も含めて遅れ気味です。

オールマイティに、パソコンのようにキーボード・マウスを使って教育用途に使用しよう・・・とすると、出来ることに制限が付いてしまいます。
iPad を選択するということは、敢えて言うならば「管理を最優先」に考えた結果と言えるでしょう。
管理コスト(TCO)から考えると、一番 iPad が低いと考えられます。

対する Chromebook ですが、アプリの導入が "Chrome ウェブストア" に限定される点では iPad・Windows S と同様ですが、アメリカ軍の調達規格 "MIL規格" に準拠した頑丈さを売りにする筐体が多くあることがウィークポイントでしょう。

学生、とくに低学年では頑丈さは重要です。
管理コストから見ても(Chromebook も一度導入してしまえば)現場でノウハウを蓄積していけば良いので、産みの苦しみはあるにせよ、毎年の運用でこなれていくはずです。

こういった視点から見ると、Chromebook はこれからもシェアを拡大していくと考えられるのです。