2012年に登場して以降、確実にシェアを獲得してきたシングルボードコンピュータの雄 Raspberry Pi(ラズベリーパイ)ですが、シリーズが増えてきて把握が難しくなってきたので整理しました。
目次
概要
Raspberry Pi は、シングルボードコンピュータに分類される製品です。
base on シングルボードコンピュータ - Wikipedia
シングルボードコンピュータとは、むき出しの一枚(シングル)のプリント基板(ボード)の上に、必要なものに絞ったCPUと周辺部品、入出力インタフェースとコネクタを付けただけの極めて簡素なコンピュータである。
手のひらサイズのボードに、コンピュータとして使うための機能が実装してあります。
コンピュータの5大要素
現代のコンピュータを形作っているキーワード「5大要素」を、シングルボードコンピュータは満たしています。
- 演算装置
CPU / SoC が演算(計算)を担当しています。 - 制御装置
CPU / SoC が演算とともに制御も担当します。
(ここで言う制御は、各チップや周辺機器などの調整を指します)。 - 記憶装置
メインメモリ(RAM)や補助記憶装置(HDD, eMMC, SSD, microSD など)が該当します。 - 入力装置
キーボードやマウスなど入力を担当する装置。 - 出力装置
ディスプレイやプリンタなど出力を担当する装置。
(データの送受信は含まれません)。
5大要素を満たしているシングルボードコンピュータは(HDMI 端子や USB 端子を持ち Linux をサポートする製品なら)PC のようにも扱えます。
それぞれをシングルボードコンピュータの特性と併せて、見ていきたいと思います。
演算装置・制御装置(CPU / SoC)
シリーズ累計の販売台数が 1,000万台を超え、シングルボードコンピュータの代表格となった Raspberry Pi は、RISC(リスク)アーキテクチャの SoC である ARM(アーム)を搭載しています。
※SoC は、CPU に GPU や Wi-Fi・LTE モジュールなどをワンチップにまとめた物を指します。
PC 陣営主力の Intel・AMD が提供する CISC(シスク)アーキテクチャとは、異なるアーキテクチャを利用しています。
RISC は CISC と比べて何が優れているのでしょうか。
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パラエティが豊富
素の ARM は(ARM 社によって)コアの設計データのみ提供されています。
実際の製造や実装に関わる部分は、各メーカーに委ねられています。
そのため、各製品は SoC の製造メーカーのカラーがでて面白いです。
その反面、(Intel・AMD が提供する)IA-32 アーキテクチャと異なり、互換性が低いです。
※あくまで、別 SoC との互換性です。同 SoC であれば互換性は保たれます。
この自由度の高さが(最終的にユーザの手に届く)製品の多様性となり、興味深い商品の登場を後押ししています。 -
省電力
ARM は Intel・AMD と異なるアプローチでマルチコアを実現しています。- ARM
ヘテロジニアス・マルチコア
異なるコアでマルチコアを実現するプロセッサの総称。 - Intel・AMD
ホモジニアス・マルチコア
同種のコアでマルチコアを実現するプロセッサの総称。
- ARM
ARM の場合、ハイパフォーマンスな(だけど電力を消費する)コアと、ローパフォーマンスな(だけど省エネ)コアを抱き合わせてマルチコアにしています。
これにより、低負荷状態であればローパフォーマンス(且つ省エネ)なコアだけを稼働させることで省電力を実現しています。
※スマホなどの SoC が ARM 一色なのは、省電力でパッテリー持ちが良いためです。
(Intel・AMD も SpeedStep 等で省エネ対策をしていますが、互換性重視のため一足飛びに省電力とはいかないようです)。
記憶装置
記憶装置は幅が広いので、ここでは一次記憶装置・二次記憶装置に的を絞っていきます。
一次記憶装置
メインメモリ(単に、メモリや RAM などとも呼ばれます)です。
シングルボードコンピュータは、PC 同様に DDR(DRAM)です。
※形状により名称は様々です。
二次記憶装置
補助記憶装置全般です。
主なものは以下になります。
- HDD
大容量ストレージの代表格、ハードディスクです。
Raspberry Pi で使う際は(HDD インターフェース SATA を)USB へ変換して接続します。 - SSD
高速ストレージの代表格、SSD(Solid State Drive / ソリッドステートドライブ)。
Raspberry Pi で使う際は(HDD 同様に)USB へ変換して接続します。 - eMMC, UFS
eMMC は(SD の前身 MMC の)後継規格で、UFS はその eMMC の後継と目されている高速メディアの規格です。
イメージは、ボード直付け(オンボード)の SD カードです。
※Raspberry Pi 以外の 一部の シングルボードコンピュータでは、eMMC をオンボードで装備している製品もあります。 - microSD
(Raspberry Pi を含む)主要なシングルボードコンピュータは、ブーどデバイス(起動ドライブ)に microSD カードを利用します。
※Banana Pi M1 Classic などは SD カードがブートデバイスです。 - USBメモリ
USBメモリや USB ハードディスクも補助記憶装置です。
入力装置・出力装置
シングルボードコンピュータでは、主にディスプレイ・キーボード・マウスでしょうか。
※サーバ利用であれば、ディスプレイ・キーボード・マウスは不要ですが、初期セットアップ時は必要になります。
ARM アーキテクチャ向けプリンタドライバのパッケージ版は簡単には見つかりません。
※ARM 用 CUPS のソースはあるので、コンパイルすれば可能性は高いでしょう。
製品
ここでは、RJ-45(有線LANコネクタ)搭載モデルである「Model B」 に絞ってご紹介します。
Raspberry Pi 4 Model B
前モデル「Raspberry Pi 3 Model B+」との主な変更点は、以下になります。
- メモリ増量
従来の 1GB に加え、2GB・4GB・8GB モデルが追加されました。 - micro-HDMI コネクタへの変更
従来は Full-size HDMI でした。 - Gigabit Ethernet の実装
ネイティブ 1000BASE-T になりました(従来は max. 300Mbps)。 - USB 3.0 の実装
仕様
- Power Supply
USB Type-C ソケット
5V/3A - Soc (CPU)
Broadcom BCM2711
クアッドコア(4-Core) / ARM Cortex-A72 1.5GHz - メモリ
1GB, 2GB, 4GB, 8GB - ネットワーク
RJ-45(1000BASE-T / Gigabit Ethernet)
2.4GHz and 5GHz IEEE 802.11.b/g/n/ac wireless LAN, Bluetooth 5.0, BLE - USB
USB 3.0×2port
USB 2.0×2port
- ディスプレイ出力
micro-HDMI×2port
(1port only: 4kp60, 2ports 4kp30)
Raspberry Pi 3 Model B+
前モデル「Raspberry Pi 3 Model B」との主な変更点は、以下になります。
- Gigabit Ethernet の実装
(USB 2.0 接続のため max. 300Mbps ですが)Gigabit Ethernet を初実装しました。 - IEEE 802.11 ac の初サポート
従来は、2.4GHz(IEEE 802.11 b/g/n)のみでした。 - Bluetooth 4.2
従来の Bluetooth 4.1 からバージョンアップしました。
仕様
- Power Supply
Micro USB Bソケット
5V/2.5A - Soc (CPU)
Broadcom BCM2837B0
クアッドコア(4-Core) / ARM Cortex-A53 1.4GHz - メモリ
1GB - ネットワーク
RJ-45(1000BASE-T)
Gigabit Ethernet over USB 2.0 (maximum throughput 300 Mbps)
2.4GHz and 5GHz IEEE 802.11.b/g/n/ac wireless LAN
Bluetooth 4.2 / Bluetooth Low Energy(BLE) - USB
USB 2.0 ports - ディスプレイ出力
Full-size HDMI
Raspberry Pi 3 model B
前モデル「Raspberry Pi 2 Model B」との主な変更点は、以下になります。
- 無線機能の初実装
Wi-Fi, Bluetooth を初実装しました。
仕様
- Power Supply
5V/2.5A
Micro USB Bソケット - Soc (CPU)
Broadcom BCM2837
ARM Cortex-A53 1.2GHz
(Quad-Core) - メモリ
1GB - ネットワーク
RJ-45(100BASE-TX)
IEEE 802.11 b/g/n 2.4GHz
Bluetooth 4.1 / Bluetooth Low Energy(BLE) - USB
USB 2.0×4port
- ディスプレイ出力
Full-size HDMI
Raspberry Pi 2 Model B
前モデル「Raspberry Pi 1 Model B / Model B+」との主な変更点は、以下になります。
- メモリ増量
256MB / 512MB → 1GB になりました。 - SoC パワーアップ
シングルコア → クアッドコアになりました。
仕様
- Power Supply
Micro USB Bソケット
5V/1.8A(5V2A) - Soc (CPU)
- Raspberry Pi Model B
Broadcom BCM2836
クアッドコア(4-Core) / ARM Cortex-A7 900MHz - Raspberry Pi Model B V1.2
Broadcom BCM2837
クアッドコア(4-Core) / ARM Cortex-A53 900MHz
- Raspberry Pi Model B
- メモリ
1GB - ネットワーク
RJ-45(100BASE-TX)
(Wi-Fi, Bluetooth 無し) - USB
USB 2.0×4port
- ディスプレイ出力
Full-size HDMI
Raspberry Pi 1 Model B / Model B+
- Power Supply
Micro USB Bソケット- Raspberry Pi 1 Model B
5V/1.2A - Raspberry Pi 1 Model B+
5V/1.8A(5V2A)
- Raspberry Pi 1 Model B
- Soc (CPU)
Broadcom BCM2835
シングルコア(1-Core)/ ARM11(ARM1176JZF-S) - メモリ
256MB / 512MB - ネットワーク
RJ-45(100BASE-TX)
(Wi-Fi, Bluetooth 無し) - USB
USB 2.0×4port
- ディスプレイ出力
Full-size HDMI